スポーツでは練習するほど技能が向上するのか?最新の研究によれば答えはNoです。アスリートのパフォーマンスにおいて、トレーニングはその18%にしか影響していません。
アスリート間におけるパフォーマンスの差異の18%のみが、トレーニングによるものである
一流のアスリートほどこの影響は小さくなります。
また、一流のアスリートは、能力の低いアスリートよりも早い年齢でスポートを始めるという傾向はなく、それどころか、同じ年齢か、あるいはより遅くに始めることが多いことが確認されました。
ケースウエスタンリザーブ大学のMacnamara氏らは、スポーツの成績と練習時間が比例するという一般論を調査しました。
「一流のアスリートにとって練習は、高水準の技能を得る上で必要不可欠であるが、特定のレベルに達した後は練習量の多寡が反映されなくなる」とMacnamara氏は話します。
練習量とパフォーマンスの関連性を調査したこの研究結果は、ジャーナル誌『Perspectives on Psychological Science』に掲載されています。
残りの82%は他の要因によることがわかりました。
その要因は次のとおりです。
-筋肉や血液への酸素供給量に関連する遺伝的要因
-自信や不安などの精神的要因
-知能と作業記憶working memory
「複数の要因に着目したが、特定の人のパフォーマンスを100%予測することはできていない。これはスポーツに限られたことではない。しかし、我々は今後も改善していく。」とMacnamara氏は話します。
今回の研究結果は、“10,000時間練習すれば誰でも一流のアスリートになれる”という考えを否定するものです。
1990年代に行われた研究により、この“10,000時間ルール”はスポーツ界で有名になりました。これを反証する他の研究結果が過去に発表されましたが、この考えは多くの人々により支持されてきました。
この1万時間ルールのコンセプトは、ハードワークと献身を理想とする米国社会ですぐに受け入れられましたが、スポーツだけでなく他のあらゆる技能でも本質的な差異をもたらしません。
ハイレベルに達したアスリートは、能力の低いアスリートよりも早くにスポーツを始めていないことが、今回の研究で確認されました。
そのため、遅い年齢でスポーツを始めることにメリットがあるのかもしれません。身体的に成熟した人はスポーツの基本とケガのリスクをすぐに理解できるという可能性があります。
1万時間ルールを信じている人は、子供が何のスポーツを好むのかさえわからない早い段階で特定のスポーツを教え込むため、燃え尽き症候群を引き起こす原因となります。