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平井 将秀

麻酔薬投与の自動装置


サイエンスフィクションっぽく聞こえるかもしれませんが、昏睡状態の患者の脳活動をモニターするだけでなく、薬剤を自動的に調整および投与して適切な状態を保つコンピューターシステムが、MITによって開発されました。

外傷性脳損傷( traumatic brain injury)を負った患者に対しては、腫れを抑えたり、脳に回復時間を与えたりするために、薬剤を用いて昏睡状態に誘導するのが一般的です。

この昏睡状態は数日間持続するため、適切な鎮静状態(sedation)を保つために看護士が注意深くモニターする必要があります。

Massachusetts General Hospital (MGH) の麻酔専門医(anesthesiologist)Emery Brownは次のように説明します。

「脳を一定状態に保つためには誰かが定期的に戻ってきて患者をチェックしなければなりません。そこでコンピューターに任せたらどう? というアイデアが生まれたのです」

研究員はラットを用いて実験を行い、今はヒト臨床試験を計画しています。彼らが言うには、『PLOS Computational Biology』に掲載された論文は、てんかん発作(epileptic seizures)を患う人々にとっても大きな意味を持つとのこと。

ブラウン医師らがさまざまな活動状態を示す脳波パターンを分析したところ、覚醒、睡眠、昏睡などの各状態はそれぞれ独自の脳波図( electroencephalogram )を示すことがわかりました。

医学的に引き起こされた昏睡状態において、患者の脳は一時的に数秒間静かであるものの、そのあと急激に活発化します。『burst suppression』として知られるこのパターンにより、脳は重要なエネルギーを節約することができます。医師らはburstの回数を(EEGスクリーンで見られるように)制御し、パターンを数時間または数日間保つことを試みました。

ブラウンらのチームはコンピューター、EEGシステム、薬剤注入ポンプ、制御アルゴリズムを用いて、脳と(認識、感覚、運動機能をサポートする)外部装置間のコミュニケーション経路『脳-機械インターフェース』の確立に乗り出しました。

サイエンスフィクション的な方法で制御アルゴリズムがEEGシグナルを処理し、脳内の麻酔活性を計測して秒単位で投与量を調節します。同プログラムは(医療スタッフには不可能な正確性で)昏睡レベルを即座に高めることができます。

この研究に参加していないハーバード大学医学部のSydney Cash は次のように述べています。

「医療において我々が行うことのほとんどは、患者にとって何がベストかを推測することです。今回のアプローチ法では医師や看護師の推測を必要とせず、投与判断をコンピューターに任せることができます。」


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