転移性乳癌細胞の活動を抑制する遺伝子が同定されました。同遺伝子を体内で増幅する医薬が開発されれば、癌の悪化や転移を制御できる可能性があります。
日本人女性に生じる癌では乳癌が最も多いです。乳腺で形成された癌細胞が転移能を有すると、乳腺を覆う膜を破壊して血中やリンパ液に入り込み、他器官へと移動してそこで腫瘍を形成します。乳癌の患部に治療を施しても、2、3割の患者で他器官への転移が生じるため、この乳癌細胞の移動を抑えることが喫緊の課題となっています。
7年前に同定された遺伝子「Monad」と、ここから翻訳されるタンパク質に焦点を置き、乳腺部位のMonadを計量した結果、乳癌細胞がリンパ節に転移した患者では同遺伝子の量が、未転移の患者の同遺伝子量の50%程度でした。
さらに、転移能の高い乳癌細胞に同遺伝子を導入すると転移能が失われました。癌細胞における転移誘導性タンパク質の生成が、Monadから翻訳されたタンパク質によって阻害されていたのです。
転移能を示すマーカーとしてMonadoを用いれば、患者や医師は医薬か手術どちらかの治療を選ぶか判断できるようになります。