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平井 将秀

自殺願望の強さを示す『SAT1バイオマーカー』


 ジャーナル誌Molecular Psychiatryに掲載されたある研究で、3年以上に及ぶコホート試験に参加した双極性障害(bipolar disorder)の男性患者が分析されました。

 Indiana University School of Medicine所属の精神科医と他の研究員が患者に対して一連のインタビューを行いました。

 試験開始時、およびその後3回の来院時にインタビューを行い、3週および6ヵ月毎に血液採取も行いました。

 患者の来院時には毎回、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Rating Scale for Depression-17)を用いて精神医学的スコアの採点を行いました。この尺度には、自殺感情レベルを判断するための自殺念慮(suicidal ideation)率が含まれます。そしてその後、被験者から血液を採取しました。

 「自殺念慮の無い状態」から「自殺願望の強い状態」への劇的な変化を報告した被験者の血液を対象に、研究者が分析を行ったところ、強い自殺感情を経験したことのある患者と、自殺感情の弱い人々との間には、有意な遺伝的差異があることがわかりました。

 マーカー『SAT1』は自殺思考に関連した強い生物学的シグナルであることが明らかになり、さらに、自殺者の血液サンプルの分析では、複数の同一マーカーの値が上昇していることがわかりました。他の2つの患者グループから得た血液テスト結果の分析では、これらの特定のバイオマーカーが「将来の自殺関連入院」と「血液テスト前の自殺関連入院」に結び付くことがわかりました。

 自殺は精神医学的な問題であり、民間人と軍人にとっての大きな問題ですが、その客観的マーカーは今まで存在しませんでした。

 尋ねられても自殺感情があることを言わず、実際に命を絶ってしまう人がいます。そのため、このような悲劇が起こる前にその前兆を特定して防止するためのより良い方法を模索する必要があります。

 自殺行為と自殺のCDC統計によれば、米国では2010年に前者が713,000件、後者が38,364件発生しています。

 自殺は複雑です。なぜなら、精神障害や中毒を原因とする事例に加えて、生活に対する満足感の欠如や、将来への悲観、周りから必要とされていないという感情、自殺を選択肢の一つと捉える文化的要因などに関連した事例があるからです。


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